No.00001100

トム・リポート 2(創作)

超合金スーパーミクロンとミクロマン



(M)A.D.1975/4/xx
(C)A.D.2002/4/xx
海底都市ネオ・ノーチラス サイボーグ研究所 所属
ビクトリー計画 素材研究班 スーパーミクロンチーム
チーフ M-109X トム


 この超合金スーパーミクロン(以下:SM)は、彼らスーパーミクロマンの全ての細胞から分泌されその細胞組織を覆っている。装甲材として利用するにはこの金属部分のみが必要な為、細胞の一部を採取し金属部分のみを取り出した。しかし、この金属粒子同士がどんな方法を採っても結合しないのである。調査の結果、これはひとつの元素であることは分かったがなぜ同じ元素同士、または他の元素とも結合しないのかは判明しなかった。元素であるならば精製はできない。更に結合ができなければ装甲材としての使用も不可能であった。

 そこで我々は、基本に返り彼らの細胞の分析から始めた。結果は、彼らの細胞自身が分泌したSMをまとい、細胞の収縮によりSMが集約され硬化していることが分かった。つまり、通常の状態では軟体質であるが物理的衝撃・有害宇宙線の照射を受けると細胞が反射的に収縮し超高硬度化するのである。すなわち、結合の触媒として使用できるのは彼らの細胞という訳である。

 この事から、我々の技術でも精製は不可能と判断。彼らの細胞組織からの培養を考案し実験に移した。がしかし、なぜか細胞組織はどんな触媒を使っても増殖せずに死に絶えてしまいこれも不可能と判断。

 途方にくれた我々は、基本の基本に返り、我々ミクロマンの生理・生態の分析から始めることとした。検査・実験を重ねるに連れ我々自身が理解していなかった事実があからさまになった。


@生物としてのミクロマン

 気付いていて当然であったのだが誰もが不覚だった。我々は各個にカプセルに装填され各個に進化を続けた為に先祖は同じでも既に種が異なっていたのである。比較的に接近して蘇生した者同士でも、DNAはサルと人間程も違っていたのである。これでは細胞組織の移植・輸血等は全く不可能である事がわかった。故に、我々は"別種族間共同体"とでも言うべき存在として我々自身を理解しなければならなかった。


Aミクロマンの生理・生態・生殖

 聞き取り調査によると、気になりながらも誰もが真実を確かめる事を遠ざけていた問題であった。実験の結果、我々は雌雄別体の哺乳類型生物であることがわかった。更に進化を促す為か、種の保存の為かクローンは発生できないようになっていた。これが原因で、細胞の培養が出来なかったのである。更に、交配の"お相手"はなんと種を選ばないのである。言い換えるとどんな生物でもかまわないと言うことである。正直この事実には驚きを隠せなかった。確かにカプセル内で各個に蘇生してしまえば"お相手"を同一種族に求めると交配は不可能である。その為に"お相手"は染色体上異性であればどんな生物でも交配が可能という結果であった。"種の保存"の観点から、単身では"お相手"を選んではいられないということである。カプセルからの蘇生後は単身である可能性がほぼ100%に近いというのに、なぜミクロアース人はクローンを拒んだのだろう。今の我々には理解できない。しかし、そうなっているからには受け入れるしかない。更に言うと、雌性の場合、自らに"お相手"の生殖細胞を取り込めば受精・妊娠・出産が出来、雄性の場合、"お相手"に自らの生殖細胞を注入できれば"お相手"がその生物の生殖手順に則って出産する。受精してしまえばDNAの展開により第一世代からミクロアース人類になると思われるのだが、それ以上の実験は倫理上の理由から許可は得られなかった。いずれ仲間の誰かが実証してくれるだろう。それに、どんな生物にでも産ませられるという事であるのだが、まさか植物や昆虫に育成させる訳にもいかず、"種の保存"の観点からも我々が行うべきである。こんな事をいちいち解説している自分がおかしくもある。これ程、我々には驚きの事実であったのである。

 上記のクローンの拒否については、意図的な拒否だったのか、技術的な問題で不可能だったのかは推測でしかないが、第1世代で産まれるのがミクロアース人類である。と言うことからすると、生殖を元の雌雄別体の哺乳類型にたどり着かせる為にははずす事の出来ない進化だったとも考えられる。これ以上は今後の研究に期待する。


 これにより、SMの精製、培養による増産は不可能と断定。しかし、更なる研究によってはその範疇ではない。



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