No.00029910


消えゆく星の上で(創作)
(A)xxxxxxxx/11/xx
(M)A.D.1975/11/xx
アルデバラン系第3惑星アーデン星
宇宙船造船技師
 「ねえ、お父さん。」
 「んー。」
 「学校なくなるってほんと?」
 「ええ?なんで学校が無くなるんだ?」
 「だって、みんな言ってるよ。『国の全員で別のワクセイに行く船を作るんだ』って。五百千万隻も。『ガクトドーイン』だからぼくたちも手つだうんでしょ?」
 「なるほど、そう言う事か。確かに手伝うと言えば手伝うのかなあ・・・。でもな、お前達が船作る訳じゃないさ。」
 「じゃあ、なに手伝うの?」
 「そうだなあ。お前が手伝うのは・・・、この星を離れて新しい星に行って・・・、その星でどうやってみんなが仲良く暮らせるか考えることだ。」
 「へー。無理。」
 「今はできないさ。それをするのは。お前が大人になってからだ。」
 「じゃあ今は?何するの?」
 「勉強さ。」
 「ええー。今と変わんないじゃん。」
 「そうさ。それが今のお前に手伝える事さ。船を造るよりもっと大変だぞ。いっぱい勉強して、国の偉い人になって、みんなが仲良く暮らせる国を作るんだから。」
 「無理。できる訳ないじゃん。」
 「そんなことないさ。お父さんだって子供のころ勉強できなかったし、図工も全然ダメ。なのに今は、みんなが乗れるでっかい船造る仕事してるだろ。みんなの役に立ってるぞ。・・・まっ、それ以上偉くなれなかったけどな。・・・でもな、この星を出たら宇宙人にも会えるかもよ。そして、そいつらとも仲良く暮らさなきゃならないかもよ。そうなったら、どうやってみんなが仲良く暮らせるか考える仕事はものすごく大事な仕事になるんじゃないか。船を造るよりもな。」
 「宇宙人なんて居ないよ。」
 「なんでだよ。」
 「だって、みんな言ってるよ。」
 「じゃあ、お前はみんなが言ってる事は信じても、お父さんの言う事は信じないんだ。へー。」
 「・・・そうじゃないけど・・・。」
 「いいか、この星にお父さんやお前が居るだろ。だったら、この星とそっくりな星が有っても変じゃない。そこにお父さんとお前みたいな家族が居ても変じゃないだろ。な。だから『宇宙人は絶対にいない』なんて考えるのはおかしいだろ。どんな事でも『絶対これしかない。』なんて事はないのさ。何事もこう考えるようにならなくちゃな。」
 「へー。」
 「・・・お前なあ。まっ、ちょっと早いか・・・。」
 「へー。」
 「お前・・・(怒)」




 「はいはい。家族二人だけのお父さん。おかしな『洗脳』はそれくらいにして、めったに無い休みなんだから空調の調子見てよ。部屋の中までこんなに寒いんじゃあ、明日の『昨日の凍死者数』3人分増えちゃうわよ。今月は『凍死者数ゼロ月間』なのに、もう26人も亡くなってるんだから。やーねー。」
 「おまえなあ、そこまでひどくないだろ。」
 「そんなことありません。この間だって隣の町で有ったでしょ『空調の不調放置、一家4人凍死』ってニュースが。いつ誰が被害に遭うかわかったもんじゃないんですからね。油断大敵ですよ。家族二人だけのお父さん。」
 「二回も言うな。・・・わかったよ。」
 「へへっ。お父さんの負け。」
 「うるさい。お前も手伝え!」
 「えー。」







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 そう。党の発表では、この星はあと3年で大爆発を起こしアルデバラン系から消えるのだそうだ。最新の観測値ではあと3年10ヶ月後らしい。全ての民が別の惑星に脱出するのだそうだ。その為に全ての民総動員体制で「恒星間航行超大型宇宙船」を造船中だ。その数、およそ4万5千隻。総人口4億3千万の民。これを全て別の惑星へ移住させようというのだ。途方もない計画だ。ましてや移住先もまだ見つかっていないとの事。・・・本当かどうかは正直分からないし実感と言うものも全くない。しかし、同志様がそう言っているのだから我々は信じて行動するしかない。全ての民が半信半疑のまま、求められる能力を造船に注いでいる。学校でもその事が話題になっているようだ。確かにこの星はここ300年あまりで急激な変化を起こした。大気中に有毒ガスが急増、加えて急速な寒冷化である。原因は不明。およそ300年前は43億の民が温暖な美しいこの星で平和に暮らしていたらしい。教科書にも『住みやすい美しい星だった』と過去形で載っている。民も弱々しい柔らかな肉体を持っていたらしい。しかし、現在のこの状況をみると全く想像ができない。あんな肉体のままだったなら外出さえままならなかったであろう。あんな不便そうな肉体でも生活が成り立った環境だったということであろう。いずれにしろ国の偉い同志様達のお陰で、全ての民がこの丈夫な肉体を手に入れる事ができた。有りがたい事だ。だから今回も同志様達を信じなければならないのだ。全ての民が一丸となって。そうしていれば移住先も見つかり船の完成も、脱出も間に合うに違いない。今まで国が行った事に間違いは無かった。これからもそうであると信じる・・・。




 「お父さん。早く終わらせようよお。『バルル軍曹』はじまっちゃうよお。」
 「おっし。」




 しかし・・・もし、・・・もし万が一、これが本当で実際に間に合わないような事があれば、妻と息子だけはどんな手を・・・いや、どんな卑劣な手を使っても脱出させるつもりだ。・・・息子の『洗脳』もしたし(笑)。私には勿体無い妻も居る。新たな地では本当に二人だけの家族になってしまうが二人なら大丈夫。これは確信できる。






























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