No.00032010

ナイトニウム・モード転化(創作)



(M)A.D.1978/11/xx
(C)A.D.2005/11/xx
匿名スパイマジシャン


インテリジェンスエリア

 先日、「富士山地球本部」の運営主体となる全12エリアが確定し、暫定人事も公表された。我々の新たな所属は「保安機関(CRIM)のインテリジェンスエリア」となっていた。「我々」と言ったのは、それがMCIA(ミクロマン中央情報局)の組織体系が人員もそのままに移行されただけであった為である。つまり「看板の掛け換え」にすぎなかったという事である。これには我々スパイマジシャンも、後身スパイマジシャン達も思いはそれぞれ胸の内として、見事に期待はずれであった事は間違いない。しかし、逆に言えば前組織のMCIAが再編を必要としない程に出来上がった組織だったということであろうか。いや、むしろ職域すら隠ぺいされているMCIAの組織には手を付けられなかったと言った方が正しいのかもしれない。

 驚きもあった。トップ人事である。新たなインテリジェンスエリアの長官職には当然、前局長のM-130デューク、副長職には前副長のM-140ホークが当てられるものと思われていたが、長官にはなぜか暫定ではあるがM-113ボビーとなっていた。この「なぜか」には色々な意味が込められている訳だが今は置いておく。そしてM-130デューク、M-140ホークだがインテリジェンスエリア所属ではあったものの役職はなかった。何か裏のありそうな人事だと誰もが思っていたが今は知る由もない。いずれにせよ我々は今まで通り、この地球の環境と人類、それに我々ミクロアース人を守る為の裏方に徹するしかないのである。








※後身スパイマジシャン = 訓練によりスパイマジシャンとなった者
























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フードマン専用・ナイトニウム・スーツ

先月、太陽系アステロイドベルトにある「フードマン・アステロイド基地」に駐留するチームから報告があった。

No.0089XXXX
 フードマン科学陣が「ミクロナイト」に使用された新素材「ナイトニウム」をフードマンのスーツへ転用することに成功し、「フードマン専用・ナイトニウム・スーツ」を完成させた。


 こんなに短期間で新素材「ナイトニウム」をスーツに転用するとは。フードマンらの科学力はどこまで進んでいるのか・・・。我々も独自に、元々ミクロアース人が持っていたであろう科学力を取り戻すため、ミクロマンコマンド3号らを師とし言語/非言語も交え定期的に学習を行なってきた。しかしながらフードマンらは我々より更に彼らの時間軸でおよそ3万7千年に及ぶ膨大な歳月、世代を重ねて来たのである。その科学力は絶大であろう。
――― 宇宙船ノア(フードマン) データ ―――
地球からミクロアースまでの距離  ・・・・・・・・・・・・・・・・・ およそ 30000光年
宇宙船ノア(亜光速航法)の移動距離  ・・・・・・・・・・・・・ およそ 30000光年
宇宙船ノアの探索・開拓等による滞在・移動期間  ・・・・ およそ  5000年
宇宙船ノア(通常航行)の移動期間  ・・・・・・・・・・・・・・・ およそ  2000年
ミクロアース消滅からの宇宙船ノア艦内 経過時間  ・・・ およそ 37000年


 いずれにしろ我々は、この情報入手の時点から即、「ミクロマン」となった我々が使用することへの問題点の調査を開始した。結果、重大な問題点が浮き彫りになった。それは、このスーツを着用することにより、我々ミクロマンが現在もっている様々な能力作用をも阻害していまう点であった。彼ら生身のフードマンは「フード」など様々な装備を体外に装備しているが、我々ミクロマンは体内または、「ブレスト」を身体に直接装備することで、様々な能力を保持している。仮に、これを着用し対ブレストボンバー能力を得たとしても、代わりに生命維持能力など基本的な能力ですら確実に低下し、ブレストボンバー以外の攻撃に耐性を失う事になるのである。結果、残念ながら我々への転用は叶わない装備であることが判明した。





















2












ミクロナイト MC-007

 先月、「ポリスキーパー」によって完成された「ミクロナイト」が、先程インテリジェンスエリアにも1機配備された。索敵機能を強化した機体でテストも兼ねての配備であった。ようは、ミニ・ロボットマンR-512 青:後方支援タイプ(情報分析・指揮サポート)と、R-513 緑:潜伏偵察タイプ(情報収集・スパイ活動)の能力を兼ねそなえた「ミクロナイト」という事であった。

 型式は「MC-007」アーデンのブレストボンバーに耐えうる「ナイトニウム・コーティング」。あらゆる物理攻撃を無効にする「専用シールド」、ポリスキーパーらが装備する「パルサーショット」の出力を3倍で発射できる驚異的なエネルギー供給能力。「MC-007」にのみ与えられた索敵能力。他、あらゆる角度からのテストが必要であった。テスト運用の任は軍事科学者でありスパイ・カー開発者でもあるM-141ヘンリーに与えられた。

 M-141ヘンリーは任務遂行の為・・・というよりは興味本位で・・・とでも言うべきか。まるで好意を寄せている女性を誘ってツーリングにでも出かけるように、ドラグタイガーを並べて出動していった。いや。出かけて行った。ようにしか見えなかった。

 しかし、帰還の報告はメディカルエリアからで全治4ケ月の重傷ということだった。残念なことだ。しかし我々としてはその交戦の情報収集が最優先。現在 隔離状態のM-141ヘンリーからの報告は期待できないため、損傷しているMC-7からピックアップできたデータの解析を行ない新たなアーデンの個体名を入手することができた。M-141ヘンリーもスパイマジシャンとしての責務は果たせたようだ。アーデン「ダイガー」いったい何者でいつから存在していたのか?いずれにしろ調査対象者が増えた訳だ。


下記に復旧データを掲載する。

No.0014XXXX 交戦記録(復元 音声記録、遠隔コミュ記録、MC-7供述で再構成)

データ Top

M-141ヘンリー 「しかし・・・、まずったな・・・」
MC-007 「・・・」
M-141ヘンリー 「ここまで追い詰められるとはな・・・」
MC-007 「・・・」
M-141ヘンリー 「すまんな・・・無様なとこ見せてしまって・・・」
MC-007 「・・・」
M-141ヘンリー 「しかしなんだ?あのイエローのアーデン・・・情報も無かったし・・・くそ!かなりまずいな・・・。」
MC-007 「・・・」
M-141ヘンリー (遠隔コミュニケーションも含め全ての通信手段を阻害されてるし、能力も体力も限界だ。まんまと罠に踏み込んでしまったって訳か。くそ!MC-007のバグ見つけてやるつもりが・・・フォローされてばかりじゃないか!いい仕事してくれるよ。まったく。・・・・・さーて、どーする?・・・)
A-352レイカー 「・・・挨拶でもしておこうか。」
M-141ヘンリー 「くっ!アーデン レイカー?!」
A-352レイカー 「ふふっ。覚えていてくれたとは光栄だ。だが・・・私とダイガーに目を付けられたら、おまえの逃げ場はひとつしかない。・・・あの世だ。ふんんーーーん!」

ドドドドドドーーーーーーーガガガガガーーーーーン!!
アーデン A-352レイカーのブレストボンバー 至近から直撃。MC-007シールドも使い、とっさにヘンリーを庇う。パルサーショット、バックパック共に消滅。MC-007自身は稼働可能であった。しかし、M-141ヘンリーは意識を失い重傷。MC-007はアーデンらの捜索活動の有無を逆探し行動可能状況になった事を確認後、ドラグタイガー1機を回収。ヘンリーを乗せ地上走行モードでメディカルエリアへ直行した。

データ End




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MC-007 交戦記録 評価

 インテリジェンスエリアLEVEL 1会議室にて先日の、M-141ヘンリー、MC-007によるアーデンA-353レイカー、正体不明「ダイガー」 との交戦記録 No.0014XXXXの検証を行なった。本来であればMC-007運用テストの結果報告の場であったはずだが、それは酷な話となった。やむを得ず当事者不在のまま検証のみを行なう事となった。それは、敵勢力の新たな個体名を入手した為である。

参加メンバー
M-113 ボビーインテリジェンスエリア長官
M-131 ディック
M-132 ダン
M-133 ダニー
M-134 デビット
M-130 デューク前MCIA局長
M-140 ホーク前MCIA副長
X-999X 他、数名


 検証内容は「ミクロナイトMC-007の高評価合格レベル」、「彼らがアーデンのマッドダークネスと言われる攻撃に囚われていた事」、「独立ミクロマン部隊とフードマンの連携よるアーデン大艦隊の撃退後の在地球アーデンの動向」「正体不明ダイガーの調査の開始」などであったが、それは正規の個別報告書類になる為、ここでは会議終了後にされた気になった話題について記録しておく。

 M-132ダンのMC-007の「ナイトニウム・コーティング」に対する高評価である。敵の音声が記録できる程の至近距離からの「ブレストボンバー」に対し、1名の命を救い自らは記録装置の損傷。武装の消滅程度で稼働には全く問題が無かった事。これに対しM-131ディックのフードマン開発の「ナイトニウム・スーツ」が我々には適さない事の指摘。他の方法での転用法の討議。しかし、結論がでるはずもなかった。そこにM-130デューク。医療・バイオテクノロジーの分野から身体をいじってみては?の一言で会議室は一瞬静まり返った。我々の身体が人間で言う医術に適さない事を誰もが知っていたからである。沈黙を破ったのはM-113ボビー長官。話が進行しないことを察しメディカルエリア M-114ブラッキー長官に打診してみる。という事で解散となった。
























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メディカルエリア 出向

 数日を待たずに、M-114ブラッキー長官からM-113ボビー長官へ連絡があった。「適当な人材に心当たりがあるから被験者を数人用意して来い。」との事。M-113ボビー長官はこれを、集めたスパイマジシャンたちに伝えた。M-132ダンは即参加を表明したが、M-131ディックからストップがかかった。富士山麓地球本部が立ち上がったばかりのこの大事な時期に、自分たちが抜けてしまっては、諜報活動に支障をきたし本部が危険にさらされるのではないかという危惧があったからである。M-132ダンは最近 部下達の負傷例が増加している事。スパイマジシャンらがもともと身体防御に関して貧弱であることから危機感を持っていた。本来、スパイたるもの攻撃されるような状況に遭遇してはならないのだが、最近はそれが通用しなくなってきていることも要因であった。その為、是非とも被験者となってでもこのミッションに参加したいと思ったのである。そこに、それを見透かしたかのようにM-140ホークが、

「いい機会じゃないか?もう、そろそろ君たちも第一線を退いて幹部候補を育ててみてもいいんじゃないか。M-141ヘンリーも今回、鼻っ柱を折られたから成長して帰ってくると思うよ。他のメンバーも同じさ。私もM-130デュークも今は手が空いているしフォローはできる。どうだろう?」

 この言葉で場の空気は一気に動いた。暗黙のうちに4名がメディカルエリアに出向することで話は決まり、即座に動き始めた。ただ、その後のインテリジェンスエリア内の事を想像すると、誰も長官の顔を見ることはできなかった。


M-131 ディック メディカルエリア 出向
M-132 ダン メディカルエリア 出向
M-133 ダニー メディカルエリア 出向
M-134 デビット メディカルエリア 出向




























5












スパイマジシャン・ナイトニウム・モード

(M)A.D.1979/5/xx
(C)A.D.2006/5/xx
匿名スパイマジシャン



ナイトニウム・モード転化の成功

 (M)A.D.1979.3月 メディカルエリア M-114ブラッキー長官より、6名がナイトニウム・モードへの転化に成功したと連絡があった。同時に彼らには2ケ月間の経過観察を必要とすることも告げられた。実は、転化に成功していたのは出向していたうちの3名と、入院中に「ナイトニウム・モード転化実験」の情報を入手したM-141ヘンリーと急遽参加した2名のスパイマジシャンだったとの事。極秘実験とされていたはずなのだが、さすがにスパイマジシャンの名に恥じない情報収集能力である。M-141ヘンリーに関して言えば、よほど悔しかったのであろう。地球人言うところの「転んでもただでは起きない」と言う事であったのだろう。実は、これも極秘で入手した「ナイトニウム・モード転化」に関する個人データを下記に紹介する。

M-131 ディック メディカルエリア 出向中 転化 辞退
M-132 ダン メディカルエリア 出向中 モード取得
M-133 ダニー メディカルエリア 出向中 モード取得
M-134 デビット メディカルエリア 出向中 モード取得
M-141 ヘンリー メディカルエリア 入院中 志願 モード取得
M-139X 匿名A(黒・?) GLFT(研究機関)所属 志願 モード取得
M-139X 匿名B(赤・黒) インテリジェンスエリア所属 志願 モード取得

 ここで、入手した詳細を説明しておく。M-114ブラッキー長官の極秘報告書には、出向した4名のうちM-131ディックが転化実験を辞退したということになっていた。理由は長官の口からは語られていない。他の3名は転化に成功。入院中のM-141ヘンリーは、たっての願いとの事で参加。GLFT(研究機関)所属の偵察部隊のM-139X匿名A(黒・?)は極秘任務遂行の為、詳細非開示のまま参加。M-139X匿名B(赤・黒)もMCIA(ミクロマン中央情報局)当時からの特別任務遂行中の為、詳細非開示のまま参加。以上の6名がモード取得を成している。しかしながらM-131ディックが参加しなかったという事は、少なからず信頼性に欠ける危険な実験だったと言う事がうかがえる。これではたぶん、この「ナイトニウム・モード転化実験」も封印されること間違いなし。となりそうである。



 その2ヶ月後(M)A.D.1979.5月、経過観察の期間が終わり出向の4名と入院中だったM-141ヘンリーがインテリジェンスエリアに帰還した。この時のM-113ボビー長官の表情がいまだ忘れられずにいる。




※(M)A.D.1979.5月頃、6名のうちM-141ヘンリー以外の5名が一堂に会した映像が地球本部内で撮影されている。メディカルエリアより解放された直後、各本部に帰還する直前に撮影されたものと推測される。


手前からM-133ダニー、M-134デビッド、M-132ダン。その向こうにもう2人M-133ダニーにそっくりな人物と、M-132ダンそっくりな人物が映っている。








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