No.99002020

フィギュア王 NO.14    
(1998年09月号)

タカラ公認
ネオ変身サイボーグ1号 オリジナルストーリー


サイボーグサーガ


第2話  「変身せよ!新たなるサイボーグ」

■ネオノーチラス

 海洋開発の最前線。海底深くに沈む人類の明日を作る未来科学研究所である。
そこには世界各国から優秀な頭脳が集められ、日夜地球を救うための研究がされている場所だ。
 サイボーグ1号も1999年ここで誕生した。アフリカの自然保護管であった片貝健一は突如として現れた怪星人ワルダーの円盤に襲撃され重傷を負ってしまった。
 だが、父片貝博士の手によりサイボーグ手術が施され無敵の肉体を持って蘇ったのだ。
サイボーグとは人間の体を機械に置き変換した物であり、体を失った人達に希望を取り戻す素晴しい技術でもあるのだ。

 地球を襲撃したワルダーとの戦いは続いたがアンドロイドA(エース)ミクロマン達との友情が生まれ、ついには協力し撃退に成功したのである。だが、その変幻自在なボディを駆使して地球を守った1号は宇宙をパトロール中消息を絶ってしまったのだ。
 そして20年後の2025年、科学要塞サイボーグステーションCX-1基地のベッドに1号は横たわっていた。
レッドギャラクシー星で1号は発見された。だが、彼を一旦死の淵に追いやった超兵器アストロキィと銀河大地震〔ネビュラクエイク〕の謎を秘めたまま、彼の記憶は失われていたのだ。
 ワルダー残党との戦いでボロボロにされたボディは新しいサイボーグボディに生まれ変わっていた。

 「ここは?」
 「ネオノーチラス基地、君のホームだよ」

 アンドロイドAが答えた。Aは1号の不在中も散発的に起こるワルダーやアクロイヤーとの戦いに参加し平和を守っていたのだ。

 「僕は一体誰なんだ?」
 「本当に覚えていないのかい?片貝健一として生まれたことも、サイボーグとして生まれ変わったことも」
 「サイボーグ?サイボーグって一体なんなんだ?」
 「君は普通の人の体とは違うんだ」
 「違う?だって君と僕とは同じ体をしているじゃないか」
 「それは・・・」

 Aは言葉につまってしまった。
いったいどう説明すればいいのだろう

 「健一」
 「あっ片貝博士

そこに片貝博士が現れた。片貝博士は重々しく話し出す。

 「もしかしたらずっとこのままのほうが良いのかも知れない。これから先記憶が戻れば、きっと私を恨むだろう」
 「恨む?あなたを」
 「片貝博士は君のお父さんだよ」
 「お父さん?」
 「健一、お前は人間という柔らかい生き物から生まれたんだ。だがそれはあまりにもつたないため簡単に死んでしまうことがある。私はそれを克服したかった。そして強い体を持つ人間を産み出したかった。そしてお前が生まれたんだ。」
 「僕は人間だったのですか?」
 「そうだ、人間として生まれ、人間を越えたのだ」



1







■2025年 東京葛飾

 今なお下町情緒の残るこの街に片貝健一はいた。
それは故郷日本を見てくるようにとの片貝博士の思いやりであった。賑やかな雑踏の中にいても健一の心は暗く孤独の霧で閉ざされていた。

 「お花はいかがですか?」
 「お花?」

 ぼんやりとしていた健一に花屋の少女が話しかけてきた。

 「だって暗い顔をしているんですもの」
 「暗い顔?」
 「そう、辛そうな顔。そんな顔していたらどんな幸運も逃げてしまうわ。」

 可憐な少女の屈託のない笑顔に健一の顔もほころんだ。

 「これあげます。」

 少女は一輪の白い花を差し出した

 「これは電子花といって電磁波で色が変わるんです」

 少女は携帯電話を近づけた。すると花がキラキラと虹色に輝いた。

 「きれいだね」
 「ねっそうでしょう この花は元々野生種だったのが都会に植えられるようになって変種したんです。でも前よりもきれいになってもっと強くなったんです。まるで自然と科学が共存しているみたいでしょ」
 「自然と科学・・・」
 「昔は環境を壊した科学も今では自然を守るために使われています。そんな人間に対するささやかな地球からの御礼だと思うんです」
 「そうかもしれない、本当にきれいだ」
 「これどうぞ、一輪だけですからお代はいりません」
 「ありがとう」

 健一はその花を受け取ったその時、「あっ!」電子花は健一の手の中でボゥと燃えてしまった。
一号の体から出る電磁波はあまりにも強力すぎたのだった。






■2025年 宇宙(地球軌道上)

 いま地球に不気味な三つの円盤が近づいていた。その中には恐ろしい姿をした宇宙人が乗っている

 「ギギギ、地球だ、攻撃しよう」
 「ガガガガ、待てゾーン。アストロキィの捜索も大事だ」
 「ギギギ、ゼロス、「ワルダーの指」の言うことをおとなしく聞くのか?」
 「グググ、壊した後で探せばいいことだ」
 「ガガガガ、ジャグラーの言う通りだな。では全滅させてから探そう」

 『すべては壊してから考えよう』








2







■2025年 東京

 突然、東京の上空にぶきみな円盤が現れ無差別攻撃が開始された。国連軍も緊急出動したが反重力を操る円盤の前に手も足も出ず敗れ去っていった。

 「あれは、UFO−7!」
 「A、知っているのか?」

 ミクロマン・トムが聞いた。

 「ああ、正体不明の怪奇宇宙人ワルグロ星人だ、戦わなくては!」
 「だめだよA、君のアンドロエンジンはもう限界だ、あと何度か戦えば作動停止してしまう。エンジンBエンジンCも使えなくて交換不能なんだよ」
 「でも、この危機を見過ごすことは出来ない」
 「アンドロイドである君はもうとっくに機能限界を超えているんだ。戦っても勝てるとは限らないよ」
 「僕はもう旧式なのか」
 「こんな時ミクロマンの仲間達が加勢してくれれば」
 「君たちミクロマンにはユートピア建設という目的がある。戦いを強制なんてできないよ」

 ドガーン!ガガガガーン!UFO−7から放たれたカノンレーザーが、伝統ある木造家屋を破壊していく。そしてそれは1号と出会った花屋の少女の家まで焼き払った。ボウ、ボボボゥ。家は強い炎に燃えさかった。

 「娘が逃げ遅れてまだあの中に!」

 花屋の少女の母親が必死で叫ぶが、さしもの消防隊員も近づけない有様だった。
 そこに健一が現れた。母親の叫びが遠くにいた健一の耳に伝わったのだ。

 「僕が助けに行きます」
 「危ない!こんな炎ではすぐに焼かれてしまう」

 消防隊員の制止を振り切って健一は中に飛び込んだ。
健一は熱さも恐怖も感じていなかった。ただあるのは自分に親切にしてくれた少女の安否を気遣う気持ちだけだった。
 炎の中少女はまだ生きていた。だがそこに瓦礫が崩れ落ちてきた。危ない!

 「あ、あなたは?」

少女は驚愕の表情で健一を見つめた、目の前の青年が炎にもえる瓦礫を素手で支えていたのだ。

 「大丈夫だ。僕は人間じゃないから」
 「人間じゃない・・・?」

 「(そう人間じゃないから)」健一は心の中に曇っていた黒い霧がざっと晴れていく気持ちがした。自分は人間ではない。それを真剣に悩み、そして一度克服したのだ。20年前心に強く誓った思いが蘇った。
 自分は人間を守るために生きよう、弱い人達を守る事こそがサイボーグの使命なのだ・・・・・・と

 「君、名前は?」
 「真理です」
 「そう、僕の知っている人と同じ名前だ。」

 健一は二コリと笑った。

 「さあ、真理さん。ここから逃げ出そう」
 「でもどうやって?まわりは炎の海で逃げようがないわ」
 「でもサイボーグなら出来る」
 「サイボーグ?」
 「そう サイボーグなら」

 『オメガクロス!




3







 健一の体が銀色に輝いた。通常人間の姿をしているときはむやみに力を使わないようリミッターがかけられている。
 そして銀色のボディに変身したときこそ全てのパワーが開放される無敵のサイボーグ1号となるのだ!

 「うおおおぉ」

 ドカーン!燃えさかる建物を打ち壊し1号達は無事脱出に成功した。

 「ギギギ、強力なエネルギー反応。なんだあれは?」
 「ガガガガ、サイボーグ1号、地球の邪魔者だ」
 「グググ、撤退すべし。戦力未定、レッドギャラクシー反応も確認」
 「ガガガ、不明。不明。ここはジャグラーの言うとおりに」






■ネオノーチラス〜CX-1基地

 「A見てごらん、UFO-7が去って行くぞ」
 「トム、1号だ1号がいるよ」

 『こちらはサイボーグ1号。これからCX-1基地に帰還する

 「1号、記憶が戻ったのかい?」

 『まだ全部が思い出せたわけではない。でも一番大事な物だけは思い出した

 「それは?」

 『戦う使命だ

 宇宙人達は去っていった。だが彼等はなぜ地球を狙ったのか?「ワルダーの指」とは何者なのか?キングワルダーと同一の存在なのか?銀河を破壊させるアストロキィの行方はまだ解っていない。戦えサイボーグ1号。宇宙に危機が迫っている!







■次回予告

 世界平和会議を護衛する片貝健一、だがそこにワルグロ星人の陰謀が迫る。
そして悲しい出会いの予感が!次号「亜宇宙旅客機SOS」を待とう!













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