No.99002140

フィギュア王 NO.26
    (1999年10月号)




タカラ公認
ネオ変身サイボーグ1号 オリジナルストーリー


サイボーグサーガ


第14話  最終回後編「永遠の命」



 「始まったぞ」

99達の目の前で星が見る見るねじれていく。巨大な重力で光すら曲がってしまうのだ。次元活断層。次元どうしのエネルギーがぶつかりあう場所。銀河大地震(ギャラクティッククエイク)そこを刺激することによって空間が崩壊、隣接する空間が連鎖反応で歪んでいくのだ。ワルダー二世が勝利の鬨をあげた

 「父一世よ、たえまない悪の帝王よ、成し遂げる最高の奸智、あなたの名を継ぐ二世であることを誇りに思います」
 「ジン、おまえはそれで満足なのか?」
 「かまうなよ斗馬、ダブルナイン。破壊を委ねる悦楽を誰が知ろうぞ」
 「たとえこの身朽ちても、俺の執念が必ずおまえ達を滅ぼすぞ」
 「さえずれ!鳥よ、いや矮小なる人共よ」
 「駄目か、増殖する相手にキリがない」

奇襲攻撃に成功したミクロマン軍団だが多勢にはさすがにかなわない

 「戦うエネルギーはあとわずかだ」
 「自分に負けるな!」
 「健吾くん!」
 「戦いを恐れてはいけない、勝つ意志を捨てては駄目だ、絶望を駆逐することが大切なんだ。僕は多くの人間からそれを教えて貰った」
 「うん、そうだ。そうともサイボーグ2号!」
 「あきらめることは勇気ではない、いつも1号はそう言っていたはずだ」
 「サイボーグ1号」
 「僕らは自分たちの意志でここまで来たんだ」
 「いつも自分で決めたこと」
 「自分で選んだ道」
 「迷っても、間違っても、心に正義の灯火があるかぎり、それはいつか炎になって運命すら焼き尽くす事が出来る!」




■空間破砕ポイントX(エックス)

ワルダー軍団の中心にある宇宙船、そこにはワルダー一世が手に入れた先史文明の遺跡にして全智全能なるアカシックコアがあった。

 「開け、銀河の英知!いま、ここにこの世界を滅ぼして我が新たな神とならん」

アストロキィを持ち、キングワルダー一世はアカシックコアを開放した。そこに宿るのは滅んだ銀河文明の知識と、それを守護する「聖霊」と呼ばれる多重データ意識群だ。脳を凍らせるような声で聖霊が話し始めた・・・・・・・





1







 「汝、名は?」
 「キングワルダー一世、暗黒星雲レゴリアに生まれし、意志もつ力。今、ここにそれを行使せん。」
 「では、この世界を問う。テンオブテン、宇宙とはいかに」
 「空間、たゆたうエネルギー、空白の連続体」
 「テンオブナイン、星とは」
 「太陽、偽りの希望、遠く離れては星となり、輝きは光速の果てをこえず」
 「テンオブエイト、大地とは」
 「隔離を生むための温床、戦争の源。ヒト分かつもの」
 「テンオブセブン、人とは」
 「記憶の詰め物、おろかなる思考の束。傲慢な意識と貧弱な肉体」
 「テンオブシックス、生物とは」
 「愚鈍の有機体、全ては隷属すべき単体とその群(むれ)」
 「テンオブファイブ、病とは」
 「苦しみの海、死神の舌先」
 「テンオブフォァ、恐れとは」
 「生きる心理、あたえ続けて価値のある絶対のことわり」
 「テンオブスリー、生きることとは」
 「エネルギーの維持と解放、そして破壊されるすべて」
 「テンオブツー、愛とは」
 「生産の幻想!」
 「テンオブワン!正義とは」
 「死を放つ絶対の意志」

 『否!』

その時だ!一世の直上に空間を割って真っ赤な姿のサイボーグ1号があらわれた。最終形態レッド!それは残る全てのエネルギーを開放する力!全てに置いて限界を超えた超パワーを持つファイナルボディだ!

 「ぬう、この大軍団を突破してきたのか!」
 『正義とは、己れを越えること、他人を愛する意志!傷つくことを恐れない自分すべての論理を自分に閉じこめることでは無い!』
 「・・・ふたつの論は無用、続けるならばいずれか証明せよ」
 「1号、その赤い体、レッドギャラクシーの力を解放したのか」
 『そうとも、おまえが恐怖していた力、最後の切り札「反物質」だ!』
 「馬鹿め、死を急いだか!」
 『いや、自らの信じる正義の遂行のため、すべての力を結集して僕はここにきた』
 「二度と戻れぬと知っていての変身か」
 『そうだ、自らの意志で決めた』
 「ぬぅ、ドロメ毒電流!」

それはドロメ毒を高電圧にしてプラズマ化する一世の必殺技だ

 『きかないぞ、ワルダー一世』

反物質である1号の体には何の攻撃も意味しない、それどころか、もし1号が自分の体の隔離フィールドを壊してしまえば正物質と反応してコントロールの効かない大爆発が起こるのだ。

 「正気か1号!」

さしものワルダー一世もその顔が恐怖に歪んだ。この場所での爆発は、ワルダーの計画はおろか、自らの死も意味しているのだ。

 『銀河の英知よ、今ここにレッドギャラクシーの力を持って願わん。この力を持ってアストロキィとアカシックレコードすべてを葬る。英知は自らが得るもの、過ぎたる知識は混乱の始まり、その知識、我らが宇宙がもう一度得るチャンスを与えよ、これを我が正義の証となさん!』
 「馬鹿な!1号、証言(ことば)だけでは何も揺るがないぞ」
 『残念だったなワルダー一世!』
 「きさまっ」
 「・・・・・了解したサイボーグ1号よ汝は審判に合格した」
 「審判?」






2







 「おろかなりワルダー一世、銀河の英知、無知蒙昧な、うぬごときに扱えるものだと思ったか」
 「何だと!」
 「神をきどるならもっと高邁(こうまい)になることだ。愚かな意志に支配されるなら全てを消しさり無に帰さん。我々は永きに渡って得た結論を実行する者を待っていたのだ」
 「ぐぬぬ」
 「では、サイボーグ一号。片貝健一よ、言葉のみでは真実とみなさぬ」
 『わかっています』
 「何か言い残すことは?」
 『言葉より、やってきた事が伝わります』
 「聡明なる君の子が世に溢れんことを」


1号の体に赤い光があふれ始めた。かって滅びた文明は反物質にてその決着をつけんとしたが、誰一人その力を行使することは出来なかった。世界を救うべきはただ一つ、強い意志と勇気だったのだ。

 『全ての生物に、自分を越えて他に尽くせる力をワルダー、その体に少しでも善の心が残るなら今この事実を語り継いでくれ』
 「・・・・・・」
 『トリプル、オメガクロォス!』

一瞬神々しい赤い光が宇宙に放たれ、ワルダーの円盤群を巻き込み爆縮し、そして消えた。銀河の英知とサイボーグ1号片貝健一の姿は、その後どこにも確認されなかった。




■2050年 地球

世界から悪が滅び去ったというには、まだ生物は愚かすぎた。ダブルナインは瓦解したワルダー軍団の解体に力を尽しダークスター健吾は新しいボディを得てネオ2号となった。少なからず戦いはつづいていた。だが、人は、宇宙の破滅を救ったひとりの青年の名を思い出すたびに少しだけ誇らしげな気持ちとなり、生きる勇気が湧いてきた。




■2050年 東京

花屋をやっていた娘に子供が産まれた。彼女は宇宙を救った英雄の名をもらいその子に健一と名付けた。変身サイボーグ1号片貝健一、その命は永遠なのだ。





















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