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第1部 第1話  ■冒険王1982年7月号■

〈あらすじ〉

町の上空を高速で飛び回る2つの影。
追いかけあうようにしながらその1つが乗用車に突っ込んで、乗用車は大破。
程なく白バイが駆けつけたところ、SF飛行機のプラモデルが落ちていた…。

主人公は達也(たつや、タッチン)という、プラモづくりが大好きな少年。
恰幅のいい母さんと交通機動隊の父さんとの3人暮らし。
その父親が、拾ったプラモをお土産に持ち帰った。
それはミクロマンのコズミックファイターだった。
すごいプラモだと思って眺めていると、頭の中で声がする。
コックピットの中のミクロマンが助けを呼ぶテレパシーだった。

ケガをしたのはケンジという若いミクロマンだった。
ケンジは達也にミクロアースとアクロイヤーの話をする。
達也がケンジをかくまうことに決めた時、危険を察知したケンジが残る力を振り絞って達也を突き飛ばすや、傍らのゴミ箱が爆発。
棚の上を見ると、1体のアクロサタンが武器を構えていた。
達也はケンジを守ろうとするが、アクロサタンの攻撃に観念を決める。
そこへ仲間のミクロマン達が現れ、銃でアクロサタンを仕留めた。

ケンジは仲間に達也を紹介するが、コロナは弟ケンジの勝手な行動を厳しくとがめた。
達也は、その異様なやり取りを見て言葉を失うのであった。

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〈新連載の背景〉

冒険王で池原版ミクロマンの連載が始まった頃は、ニューミクロマンも既に2年目の半ばにさしかかっていました。
どうして今更という感じもありましたが、テレビマガジン増刊で森藤版ミクロマンが不定期ながら始まった時も2年近くが過ぎていたのを思えば、遅いとは言えません。
満を持しての連載であったため、商品点数が充実している中での展開ができました。

しかしながら、商品群の中にはその活躍を描ききれなかったものも少なくありません。
例えば、1年目からの連載であったなら、強化スーツ1・2・3が重要な働きをしたはずです。
しかしこの時は新型のアーマードスーツが発売されていたため、旧式では間に合わなくなっていました。
3種の強化スーツの個性を生かした活躍が漫画で見られなかったのは残念でした。

また、せっかく漫画に出てきたのにもう発売していなかったものも多いです。カプセル版ミクロマンもニューアクロイヤーも既に入手困難でした。

冒険王での連載開始は、この時期盛んになってきたニューミクロマンのメディアミックス展開の一つと言えます。
ほかには、カバヤのミクロマンガムがプラモデル入りで発売されました。
ミクロマンキャラメルもそうかもしれません。
ガンプラブームを受けたミクロマン改造計画の展開もこの頃です。

ミクロマンの情報をテレビマガジンに頼っていた私には、連載開始のことは全く知りませんでした。
もし知っていたらきっと買っていたと思います。


〈扉絵について〉

異次元宇宙を背景に、10人のミクロマンが奥から走ってくるイラストです。よく1年目のカタログ表紙に書いてあったイラストと同じ構図です。ただし、カタログではオルガがセンターだったのに対し、 こちらはケンジが大きく描かれ、ミクロマン側の主役であることを感じさせます。オルガは中央から3人目にいます。ガンダムのアムロによく似た髪型です。

池原先生はミクロマンの性格設定を丁寧に扱っています。ケンジは、設定どおり少年として描いています。実物の玩具は、反対に一番の老け顔だと思いますが。

池原先生は体格や身長も描き分けています。カムイは華奢な美少年、ウイリは格闘技の選手のようないかつい体です。コロナ、エイジ、アロムは背が高く、大人であることを表しています。アロムのギョロ目は宇宙戦艦ヤマトの真田さんを連想させ、いかにも技師といった感じです。デルタブレストです。

エイジとクレオがケンジに目線を送っているところに、温かさを感じます。


〈作品への不満〉

冒頭の追跡劇で乗用車が巻き込まれた事故の責任は、ミクロマンとアクロイヤーのどちらにあるのかはっきりさせてほしかったです。
ここで表現するのはアクロイヤーの残虐性なのか、ケンジの未熟さなのかということです。
もっと詳しく描写するなら、アクロイヤーがコズミックファイターの追跡をかわすため、たまたま目に入った車を突き抜けて爆破し、コズミックファイターを巻き込んだという状況が想像されます。
しかしなぜケンジにとどめを刺さなかったのかという疑問は残ります。

白バイ隊員の父さんからコズミックファイターを受け取るくだり
「きょう交通事故があってな、そのそばに落ちてたんだ。でもへんな事故だったなあ。なんの原因か車が爆発したんだからな……」
そんな重要な遺留品をよく調べもせず勝手にもらっていいんでしょうか!
かなりお人好しで細かいことは気にしない性格なのも、都合よすぎます。

コックピットを開けてやるというすごく簡単そうなことにひどく感謝していますが、大げさすぎると思います。
閉じ込められていたというより、怪我で動けなかっただけでは?
しかも動けなかった割には、達也を突き飛ばせるなんて変でしょう。

「みんな紹介するよ。ぼくを助けてくれた達也くんだ」
に対して、普通はお礼を言ったり、自己紹介したりするでしょう。
それがいきなり叱責だなんて、そりゃ達也も「この人たち何?」って感じますよ。
達也の青ざめた顔のアップ、とてもミクロマンの活躍を描く漫画の最後のコマとは思えません。
端折りすぎです。
10ページという制約があったとしても、もう少し何とかならなかったのでしょうか。


〈池原版のいいところ〉

小学一年生掲載の「それいけ!カッチン」が、池原しげと(しげとし)作品との私の初めての出会いでした。
テレマガの「ザ☆ウルトラマン」や「ウルトラマン80」でもなじみがあります。
池原先生は手塚プロ仕込みだけに、登場人物の表情がとても豊かだと思います。
少女漫画も描いていましたので、主役の女の子がかわいいところも気に入っています。
ただし、ミクロマンには女の子が全くと言っていいほど出てこないんですけどね。

主人公の達也くんに好感を覚える点はいくつもあります。
プラモ作りに非常に熱心で作品をいっぱい飾っている所は、当時の少年たちの共感を超え、尊敬の域に入ると思います。
また、アクロイヤーからケンジを守ろうと生身のまま戦う行動はとても勇気があると思います。
そして家族や仲間にはとても明るく素直で、達也くんを取り巻く人たちは、彼の人柄によって自然と和やかな気持ちになりそうな気がします。

コロナの台詞「かってな行動はゆるさんぞ」および「アクロイヤーから地球を守るにはチームワークがだいじだ!!力をあわせてがんばろう」
から読み取れる、作者の一番伝えたかったことは「チームワーク」かもしれません。
しかしどうしてそれが大事なのかということはさっぱりわかりません。
むしろ、第1話で特に輝いて見えるのは達也くんの「素直さ」です。
コズミックファイターを手に入れ、ケンジに出会い、すぐにミクロマンと友情で結ばれるようになったのも、彼のその人柄のおかげだと思います。
タッチンの人となりを見せてもらえただけで、第1話は十分に価値があると言えるでしょう。


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