第1部 第9話 ■冒険王1983年3月号■
〈あらすじ〉 ついにミクロマンたちは宇宙からアクロイヤーの基地を発見した。 マザーコスモスからケンジが基地の偵察のため火山島に向かった。 コズミックファイターは火口に近づくとヘリに変形して着陸し、ケンジは見はりロボットの中に隠れて基地にしのびこんだ。 新兵器と思われるものを見つけ、ロボットから降りてセンサーを取り付けたところでケンジはアクロ星人に見つかってしまう。 クレオがケンジの送ってくれたデータを分析したところ、兵器の正体はミクロアースをふきとばした反物質爆弾であることが判明した。 アロムはトラクタービームの発射を決断し、エイジはマザーコスモスの全エネルギーをトラクタービームに集中させた。 一方、ケンジはいくら倒してもウジのようにわいてくる敵と果敢に戦っていた。 そこへエイジが現れてヘリでケンジの救出に成功した。 直ちにトラクタービームが発射され、アクロイヤーの基地が地盤ごと宇宙空間に浮上した。 ケンジ達はそれぞれの思いを胸に、爆発の閃光を見つめていた。 ミクロマン第1部おわり 第2部=次号につづく |
〈第9話解説〉
どのようにしてアクロイヤーの基地を見つけたのか、詳しくは語られません。
しかし状況から見て、宇宙から監視していたら火山島の活動中の火口の中に不審な建造物があるのに気づき、アクロイヤーが出入りしている形跡があることから基地と断定したといったところでしょう。
コズミックファイターは去年の7月号にも出てきましたが、3月号ではヘリに変形する見せ場があるのが嬉しかったです。
コアブロックシステムにより様々な形態でローターやキャタピラを駆動させることができ、非常に高いプレイバリューを誇る割にはテレビマガジン6月号のモノクロ記事くらいしか広告はなく、隠れた名作だと言っていいでしょう。
今回はミクロマンのチームワークの良さが光りました。
007クレオはコンピューターを使った分析の能力がすごく、アクロイヤー基地の発見や反物質爆弾の検出に力を発揮しました。
003ウイリが偵察機を送ろうと提案すると、009ケンジが単身で敵基地に潜入する勇敢な任務を即座に買って出、リーダーの001アロムが「うむ」と言っただけで行動を開始するところなど、仲間を信頼している様子がよく伝わってきます。
ケンジは去年の7月号で兄に勝手な行動を咎められてからかなり成長したようです。
アロムが命令口調になるのはコンピューターに対してだけで、エイジをケンジの救出に行かせる時も「誰かケンジを救出にいってくれ」と言うだけで救出は迅速に行われ、順調にトラクタービームが発射できました。
004エイジは「よくやった。お前のおかげで地球は守れそうだ」とねぎらうのも忘れません。
一人一人の能力や個性を生かしながら、チームが連係してスムーズに事が運ぶのを見るのは、とても気持ちいいです。
3月号で変だと思ったのは、ケンジがコズミックファイターのヘリで火口に降り立ち、エイジもコズミックファイターのヘリで救出に行ったことです。
これは、ケンジがコズミックファイターを無人でマザーコスモスに帰してしまったということになりますね。
救助がなくてもケンジが帰還できる手段を残しておかないのは不自然だと思います。
どちらかが別のメカならよかったのですが。
例えば、ケンジがバルジェットで火山島に向かって、アーマードスーツ形態で基地近くに降り立つとか。
または、エイジがミクロロボット7で出撃して、ケンジに群がるアクロサタンを蹴散らすとか。
そうやって商品のアピールをすればよかったのにと思いました。
12月号に反物質爆弾の伏線がありましたね。
地球に時限爆弾をしかけ、アクロサタンが1年の間に地球を制服できなければ地球はミクロアースと同じ運命だと言ったアクロ星人司令官の命令です。
実はミクロチェンジの後半でも、アクロデビル元帥が地球の消滅を考えるようになるというストーリーがカタログに載っているのですが、それとそっくりです。
池原版の司令官ははっきり姿を現さないのですが、アクロサタン型アクロ星人の容貌をちらっと見せることがあります。
もしかしたらこの司令官がサタンプロテクターを脱いで専用の甲冑を身に着けた姿がアクロデビル元帥なのではないかという意見が出るのも当然だと思います。
火山島の基地と反物質爆弾を破壊し、ケンジはこれでしばらくはアクロイヤーも地球に手を出せまいと考えています。
しかしアクロイヤーの基地は異次元にもあり、本当はまだまだ安心できません。
異次元発生装置は、反物質爆弾以上に恐ろしいと考えなくてはいけないでしょう。
アクロイヤーから異次元発生装置をとり戻すこと、それがニューミクロマンの最大の務めであることを忘れてはいけません。
〈007キルクについて〉
第1部に出てこなかったり、活躍の機会がほとんどなかったりした商品はその都度解説しましたが、実はレギュラーのはずのキルクが一度もまともに出てこないんです。
ミクロマン側の主役扱いである009ケンジが当然一番多く、次いで兄の010コロナ、004エイジ、リーダーの001アロムくらいが常連で、003ウイリ、005オルガ、008クレオ、002イリヤ、006カムイの順で印象が薄くなります。
クレオは名前が出たことはありませんが絵はよく出てきて、物わかりのよさそうなハンサムに描かれています。
しかし007キルクは絵さえ出てきません。
もしかしたら後ろ姿や体の一部くらい映っていたのかもしれませんが、レスキュー隊員のM251ロビンや今月末発売予定のサニーと同じボディを持つキルクの姿は一度しか確認できませんでした。
ミクロマンが勢揃いしたところはめったに描かれておらず、唯一10人のミクロマンが一度に描かれた第1回の扉絵で、キルクの特徴となる両肩の様子は何とか見分けられたものの、かなり小さくてどんな顔か全くわかりませんでした。
キルクをまともに登場させなかったことにはどんな事情があったのでしょう。
単に忘れていただけのような気もします。
〈第1部の総評的なこと〉
ページ数の制約から、どういう経緯でそのような大事なことが起きたのかを描写しないでいきなり見せ場に入ることがよくありました。
まず、第1話でケンジが単独で敵と戦っていたのはなぜか。
そしてアクロ星人の目的は何か。
旧アクロイヤーの目的がアクロトピアの建設とはっきりしていたのに対し、アクロ星人は地球侵略が目的かと思えば、地球の爆破も厭わないよう。
ミクロマンにとっては見当違いの怨みで動いているようにも見えます。
アクロイヤーの種族を存続繁栄させようという様子は見えてきません。
アクロ星人の正体は謎だと言いますが、何がわからないといって、その目的ほどわからないものはありません。
母星の状況でもわかればいいのですが。
ミクロマンはどういう立場で地球を守ろうとしているのでしょう。
追討を命じたミクロポリスが滅びても、命令はまだ有効なのか。
地球人の少年との友情に従って?
かつてのミクロアースの代わりに住む星だから?
ミクロアースの人々の敵討ち?
地球に愛着がわいたから?
そういったミクロマンの心の中を露わにすることなくして、ヒーローの使命を無条件に読者に認めてもらうことはできないと思います。
あまりにも省略が多くて、読者が知ることができるのは結局、作品世界のほんの一部だけなんだなあという思いを強くしました。
第1部で優先されたのはケンジの視点でした。
彼から見たアクロイヤーの討伐劇を、純粋な心を持った地球人の少年と出会ったことをきっかけにケンジが飛躍的な成長を遂げた時期について記録したのが本作品だったと言えます。
仲間の中で最も勇敢であるという自我を確立したことが最大の成果かもしれません。
省略されたことは、その時の主人公の心が改めて問いかける必要のなかったことであり、007とのつきあいや国家的な思惑などは、ケンジにとってあまり意味のないことだったのかも知れません。
タッチンが後半登場しなくなったのも、ケンジが精神的に脱皮して少年から大人になったことを意味するのではないでしょうか。
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