ミクロアース物語0.11の文章について

 昭和52年にミクロマンの人気は絶頂期を迎え、クラスの殆どの男子はミクロマンを持っていました。元々玩具としての魅力は大きかったミクロマンですが、雑誌やお菓子、レコードなどにおけるメディアミックス展開といった、数々のタカラの戦略が結実したのがこの時期です。そしてもう一つの戦略は流行を巧みに取り入れることですが、当時のミステリーブームにあやかってミクロマンに「古代遺跡」というコンセプトが加わりました。数あるミステリーの中で、ネッシーや心霊現象ではなくなぜ古代遺跡なのか、それは古代遺跡には宇宙との関わりがあるかもしれないと常にささやかれるからでしょう。「宇宙」とは、従来どおり憧れの対象であり、ミクロマンの故郷でもあります。不易と流行を兼ね備えた古代文明の謎に踏み込んだことで、ミクロマンの世界は一層深まりを見せました。そしてタイタン星出身でジムカと合体するタイタンコマンドも、スーパーカーブームという流行と宇宙への憧れを融合した存在でした。

 探し求めた古代の仲間が蘇りますが、結局何ひとつ謎が解き明かされることはありません。それどころか、αHという謎の元素が正式に登場し、謎は増えるばかりです。以下に、解明されるべき謎を列挙してみます。これらの謎に対して、αH研究所ではいくつかの仮説を立ててミクロアース物語0.100などで解明を試みています。

・古代遺跡は、本当は誰が何のために作ったのか
・古代のミクロマンは、その時代に何を見、何をしたのか
・古代のミクロマンが眠りについたいきさつは?
・ミクロマンコマンドやタイタンコマンドはαHとどのように関わっていたのか
・アクロイヤーだけがαHを体内に持っているのはなぜか
・αHは現代の我々にどんな影響をもたらすのか

 「コマンド」とは、特殊部隊、命令といった軍隊のための言葉です。つまりコマンド部隊とは戦闘を専門とする部隊です。しかしその割にはコマンドカーやジムカの武装は少なく、調査活動のための装備が主なものです。実際の戦い方も武器を用いない肉弾戦が中心です。つまり、αHとともに蘇った仲間は元々平和的な装いでミクロマン達の前に現れたのです。それが、ちょうどこの時期アクロイヤーによる攻撃が組織的に行われるようになったため、それに対抗する戦闘部隊を新たに創設する必要に迫られた所に登場した彼らがコマンド部隊に充てられたと見るべきでしょう。

 それほど彼らが切羽詰まっていた理由は、ミクロマンの戦力増強が後手に回っていたことにあります。まずゾーン建設用のミクロロボット1を急遽戦闘用に改良したメカロイドVが作られますが、本格的な戦闘メカの登場は昭和52年秋のロボットマシーンZまで待つことになります。サーベイヤーシリーズは兵器も装備していましたが、未開の地での活動を想定して探索、建設などあらゆる任務を行う探検用車両だったと言えます。そして充分な火力と機動力を備えたメカは、昭和53年末にロボットマンを改造してロボットマン2が作られるまで不足していました。初めから強力な戦闘用車両として開発されたのは昭和55年のブラックタイガーが最初です。

 後に地球本部の保安機関クライムにコマンドエリアが創設されたことにより、コマンド部隊はリーダーを除いて戦闘訓練から解放され、生活機関シドなどで平和的な活動に従事することが許されることになります。本来ミクロマンコマンドやタイタンコマンド達は攻撃的な性格ではなかったのではないかと見ていますがどうでしょう。それとも、残された資料には全く書いてありませんが、例えば古代世界で既にアクロイヤーと死闘を重ねてきたといった経験を生かしているのがコマンド部隊なのでしょうか。

 ミクロアース物語0.11には人類の起源に言及している部分がありますが、これは昭和52年当時の通説であり、現在では分子遺伝学などにより新しい説が有力となっています。アフリカでは2200万〜1400万年前の初期の類人猿の化石が見つかっており、「原始人類が現れたのはおよそ2300万年前」という記述に大きな狂いはありません。およそ2300万年前にヒトとオランウータン、テナガザル、オナガザルの共通の祖先が存在していたと考えていいでしょう。一方、ホモ・サピエンスが現れたのはおよそ20万〜15万年前と考えられていることから、「ホモサピエンスが現れたのは3万7000年前」というのは新しすぎます。それに近いのはネアンデルタール人が絶滅したおよそ3万年前ですが、ホモ・サピエンスとホモ・ネアンデルターレンシスが同時に生存していた時期があったことを考えなかった解釈から生じた年代ではないかと思われます。ただし、ここでは年代の不正確さはあまり問題ではなく、30億年も前にできた岩からミクロマンが生まれたという情報の意味することは、人類の誕生よりも遥か昔からミクロマンが地球にいたことを示しています。むしろ比較の対象としては、初めての生命の化石記録の方が適当でしょう。しかしここで重視しているのは、古代人類の発展にミクロマンが影響を及ぼした可能性があるということです。ミクロマンと地球の関わりは古く、ミクロマンから見れば人類の歴史はまだ浅いのです。

 ミクロアース物語0.11の文章は、以下の資料からそれぞれ最も詳しい記述を集めて制作しました。


「MICROMANミクロマン」 昭和52年

コマンドカーに付属の豆本型解説書。
ミクロアース物語0.11の文章の骨格をなす。試作品の写真が多用されている。
ミクロマンコマンドの人物紹介があるが、『ミクロマンブック』の方が詳しい。ただし一部この解説書の方が詳しいことがあり、そこは補充してある。エルダとエバンスの人物紹介が『ミクロマンブック』とは食い違っているが、『ミクロマンブック』の方に合わせた。
この中のジムカの解説文を人物紹介に付け加える形で掲載した。

「ミクロマンコマンド」 昭和52年

ミクロマンコマンドをはじめ、昭和52年前半の単品売りミクロマンに付属の解説書。73mm×323mmの帯状の用紙が折り畳まれてカプセルに入っている。
上の「MICROMANミクロマン」を要約した内容だが、試作品写真は少ない。



「TITAN COMMAND タイタンコマンド」 昭和52年

T451、T461シリーズについての解説書(上)とT471、T481シリーズについての解説書(下)の2種類がある。140mm×295mmの用紙が4つに折りたたまれている。
どちらもタイタン星での調査を詳しく記述している。

「TITAN COMMAND タイタンコマンド5号」 昭和52年

T491シリーズについての解説書。ストーリーの記述内容は上と共通。

「ACROYEAR アクロイヤー」 昭和52年

ジャイアントアクロイヤーになる4つのメカに付属の解説書。帯状の用紙が8つに折りたたまれている。
アクロイヤーの視点でこれまでのストーリーを一通り記したもので、これにしか書かれていないような内容はない。

『マガジン《ゼロゼロ》』 昭和52年

ミクロアース物語0.11の部分に関しては、上の「MICROMANミクロマン」と並ぶ詳しい記述がある。αHについてもページを割いて説明している。

テレビマガジン別冊『ミクロマンブック』昭和52年11月15日発行 講談社

人物紹介は「ミクロマン人名じてん」のページにあるほか、ジムカの説明文は「ミクロマンのひみつ99」にある。

ミクロアース物語0.11の画像について

 ミクロマンコマンドの画像は、当時のミクロマンコマンドを撮影したものが主ですが、状態が悪い場合は浪曼堂の復刻版やタカラの復刻版を用いて撮影したものが混ざっています。復刻品は当時の金型を修復して製造されており、オリジナル商品に比べて外見上特に違いはありません。足に装備した反動力ジャンパーに手が重ならないように腕を広げたポーズは、当時のカタログなどでよく使われた写真に倣っています。タイタンコマンドとジムカの写真は、発売当時の商品を撮影したものです。斜めからのポーズや、左がジムカで右がタイタンコマンドという配置は、商品の箱に使われていた写真に倣ったものです。4台の銀ジムカはタイタンコマンドが付属せず、ミクロマンの商品ではないという見方もありますが、ミクロマンを紹介する記事に掲載されており、タイタンコマンドの仲間として取り上げました。
 コマンド部隊結成場面の写真は、カタログなどでよく使われている写真をまねて手持ちのコレクションを撮影したものです。ただし、M162サンダーは、当時の写真では赤いボディのミクロマンを用います。


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