ミクロアース物語0.16の文章について
古代遺跡の探検が中心だったミクロマンコマンドの展開に続く昭和53年の舞台は、再び宇宙となります。この年の夏、「スターウォーズ」が日本でも公開されて大ヒットし、宇宙冒険物語が注目を集めました。
ミクロアースが爆発したのがαH7の影響ならば、ミクロマンが水晶の核となって滅びを免れたのもαH7の力でした。そして爆発に巻き込まれなかったミクロ星人が長い放浪生活を生き延びたのも、αH7を利用できたからです。さらに、太陽系にもαH7が近づいていることがあきらかになり、αH7の存在はますます大きくなってきました。
ミクロアース物語0.16は、以下の資料に基づいて作成しました。
『宇宙を守るミクロの戦士 ミクロフードマン』昭和53年 H701シリーズとH711シリーズに付属の帯型カタログ。フードマンについての最も重要な解説書と言える。 第1〜3節は、主にここから引用した。 |
『ミクロフードマンキットマシーンシリーズ取り扱い説明書』昭和53年 カラー面はキットマシーン1号〜10号に共通で、ここでもフードマン誕生のエピソードが述べられているほか、キットマシーン開発の経緯について明らかにしている。 |
第4節は創作である。いくらミクロ星人でも、ミクロアース爆発から40億年以上も宇宙船で放浪生活を続けるのは大変ではないかと考えてのことである。一つの文化を維持していられるのは長くても数千年単位の時間ではないだろうか。相対論効果としてよく知られているのは、光に近い速度で移動する物体の時間経過が遅くなることである。また、ブラックホールの近くのような強い重力場の下でも、時間の経過は遅くなることを一般相対性理論は示している。銀河系の中心には巨大ブラックホールがあることが確実視されており、ミクロアースも銀河系の中心部にあったとされる。フードマンの宇宙船が銀河中心の調査に赴いたことがあるとすれば、内部時間の経過はそれほどではなくても、周囲では驚くほど時間が経っているというウラシマ効果が起きることは充分考えられる。フード、ノア号、キットマシーンなどの開発者が現役で活躍していることから考えると、内部時間はせいぜい1世代程度の数十年しか経っていないのかもしれない。
『ミクロマン』フードマン登場の巻 原作/響わたる まんが/森藤よしひろ 初出:講談社テレビマガジン昭和53年3月号第2ふろく 講談社コミックス『ミクロマン 第5巻』にも収録。 ミリオン出版『ミクロマン完全版02』に再収録、発売中(ISBN-4-8130-1088-1)。 第5節のM13についての記述は、森藤版のストーリーから取り入れた。フードマンが星の墓場を訪れたという描写は、前出のフードマンカタログで語られていることだが、それが球状星団M13だという記述は漫画の中にしかない。 一般に球状星団を構成する恒星には年老いた黄色っぽい星が多く、恒星のスペクトル観測からも、核融合が進んでヘリウムの割合が大きくなっている。実際に球状星団は滅びゆく星団であると言える。 |
第6節は創作である。ミクロマンたちが地球で活躍しているこの時期にフードマンが現れたのは、やはり地球の子どもたちのテレパシーのためではないかと考える。初めてのミクロヘルプが発せられたのは、1974年のことであった。奇しくもこれはアレシボ天文台から球状星団M13にメッセージが送信された時期と一致する。このエピソードについては、space Yumi's RoomにあるM13のページを参考にした。電波が宇宙を伝わる速さは有限であるが、子どもたちのテレパシーはM13を訪れたフードマンに一瞬で届き、それが地球に進路を取らせるきっかけになったのではないだろうか。
『フードマンカード』 第7節はフードマンカードから引用した。 フードマンカードは16枚セットの非売品で、左に示したケースに入っている。ミクロアース物語0.16に用いた画像はこのカードのイラストである。製品には見られない配色や緻密な描写が面白い。ロールオーバーして現れる画像は、カードの裏面をネガ反転したものである。ここにしか見られない内部図解があり、大変貴重である。 裏面に記されたストーリーは、前出のフードマンカタログの内容とほぼ同じだが、後半はこちらの方がやや詳しい。 太陽から約2.7天文単位の距離にある、火星と木星間の軌道には、Ceres、Pallas、Juno、Vestaなどの小惑星が多数存在する。大気はないが、宇宙船が着地するのは容易であろうと想像されることから、太陽系内に初めて基地を建設するには好都合だったのかもしれない。 |