この衝撃的な場面の出典は、講談社の『コミックボンボン』昭和58年12月号である。ミクロマン10周年記念として、コミックボンボンでは9月号から7回にわたって「ミクロマン物語」が連載され、第3回までは、G.I.ジョーの流れを受け継いでミクロマンが発売された経緯や、次々と仲間が加わっていくカタログストーリー、ミクロマンパンチまでの商品紹介といったおなじみの内容であった。そして異色の第4回12月号は、星間帝王撃退後の世界を描き、ニューミクロマン編へとつなげるエピソードが語られる。
当研究所ではこの貴重な原典を、コピーではないオリジナルで所有している。
一般には、ニューミクロマンでこれまでの物語がリセットされたと言われているが、実は遥かな時空を隔てて関わりがあったのである。浪曼堂のミクロマン21の世界観などは、この「1999年グッドラック地球」を強く意識したものとなっている。一方、現在のタカラ公式設定では、1999年の事件が全く無視されている。ただしハレー彗星接近前の当時においては、様々な伏線が用意されていたことから判断して、ミクロ化と新ミクロアース爆発という衝撃の展開は、オフィシャルなものだったようだ。その理由として以下のようなことが挙げられる。
森藤氏は漫画で人類をみんな小さくしちゃって、更にその後のことも考えていたというが、そのうちに連載終了を迎えてしまったとインタビューで答えている記事が、平成3年の『宇宙船』vol.55に掲載された。結末を描ききれなかったわだかまりを昇華させたのが、後にコミックボンボン昭和58年12月号で紹介されたこの物語なのではないだろうか。
マグネパワーズやレッドパワーズのファンの立場を考えると、ニューミクロマンをはずすことで、あきら君とプロフェッサーKを同一人物であることを確実にしたいというような気持ちは理解しないこともない。また逆に、新旧ミクロマンを一つの流れで語り、そこへ更に平成ミクロマンまで取り入れようとしても、物語は破綻しかねないだろう。しかし、どちらにしても、ある世界を黙殺しようとするのは大変悲しいことだと思う。かつてビクトリー計画と呼ばれ、生い立ちを異にしたいくつものSF世界が寄り添いあい、共に巨大な悪に立ち向かったことがある。その精神に立ち返れば、あらゆる世界同士が互いを受け容れることは可能だと信じている。
その答えとして、ゲームボーイソフト「ユーボーグ戦記」は、3つの世界観をうまく統合したものだったと言われるが、残念なことに世に出ることなく発売中止に終わった。
断っておくが、当研究所の見解は、平成版を無視するものではない。しかし、我々の力不足により、当面は「ニューミクロマン」までを統合した世界の構築に専念することにしたい。その後、バイオスーツ、変身サイボーグ1号、マグネパワーズと順次取り込んでいく予定なので、ミクロアースの研究成果をお待ちいただきたい。
註1 アクアムーン:コミックボンボンの文中では「アクロムーン」と記されている。一方、ニューアクロイヤーのカタログに載っていた「アクロイヤーストーリー」では、アクアムーンと記されている。しかし上野ゴールデンエイジ限定品のM-004ゴールデンエイジの説明書に載っている「アクロイヤーストーリー」ではアクロムーンになった。ミクロアース(=ミクロマンの地球)に対立する存在として、アクロムーン(=アクロイヤーの月)という呼び方は大変素直である。しかし、正当なものが正統だとは限らない。我々の知る荒涼とした月と、あらゆる生命の源である水=Aquaを結びつけた不思議さに、私は興味を覚える。アクロ星人の住む惑星アクアムーンとはどんな星なのだろうかと、そのたった1つの言葉から様々な想像が広がっていく。
註2 アロム:コミックボンボンの文中では「アムロ」と記されている。大ブームを呼んだロボットアニメ主人公の名前に引きずられた単なる誤植であろう。
註3 イリヤ:イリアと表記されることも多い。イリヤと書かれているのは、強化スーツ時期の豆本、ミクロボーグ時期の豆本、コミックボンボンの記事など。カプセルの帯ではM-002イリア。帯型の各解説書やミクロチェンジ期の豆本でもイリア。発音すると同じだからどちらでもいいのだろうが、イリアが主流となっている。ちなみに平成4年に公開された「ゼイラム」で森山裕子が演じる宇宙賞金稼ぎの名はイリア。