ミクロアース物語 0.25

オペレーション・ムーンゲイト

 地球本部では、来るべきαHの地球接近に備えて、ふたつの作戦を展開していた。ひとつは「ビルド計画」によって培われたノウハウをもって、各地にミクロ化した人間を収容するための拠点を建設し、地球がαHに包まれた時に備える「オペレーション・ミクロトピア」。そしてもうひとつがこの「オペレーション・ムーンゲイト」である。
 「オペレーション・ムーンゲイト」は、M155ウィンドイーブルの異次元空間発生現象を解析、任意の場所へ異次元空間への扉を開くことのできる異次元空間発生装置を開発。月内部に異次元空間を発生させ、地球に接近するαHを異次元空間に閉じ込め、全地球人類のミクロ化を阻止するというもので、研究機関(GLFT)において超極秘裏のうちに進められていた。

M155 イーブル
超自然科学と異次元物理学の専門家で、蘇生中、メカアクロイヤーの攻撃を受けたために完全に実体化できない状態で蘇生している。蘇生から富士山山麓の「地球本部」完成までの間はカプセルの中で眠りについていた。その副作用のためか火、水、風、土の4つのエレメントをブレストに宿らせるという従来のミクロマンとは違った能力を持つようになる。
   ファイヤーイーブル(赤)
戦闘時での姿で「フレイムオン!」の掛け声とともに、両手、ブレストから力場を発生させる。この力場は一種の異次元繭ともいえるもので、あらゆる物理的攻撃を遮断する。その力場に包まれる姿は、あたかも炎に包まれているかのように見えるという。ただし、なぜかグリーンアマゾン総統のアマゾンガイザーを浴びると力場は消失してしまう。
   ウォーターイーブル(水)
強力な念動力によってすべての物質の原子活動を自在に操ることができる。相手を瞬間的に凍結させる必殺技「アイシングチャージ」は、この力を応用したものでアクロイヤー軍団からも恐れられている。
   ウィンドイーブル(緑)
未知のポテンシャルを秘めた形態で、異次元空間へのゲートを自在に開くことができる。その能力はαH
の地球接近とともに増大しており、時間移動すらも可能になっている。現在グルフトではこの能力の解析と開発を行い、異次元発生装置の開発が着手されている。
   アースイーブル(黒)
イーブルは通常、この姿でいることを好んでいる。ブレストより発せられる超音波「コマンドソニック」により、地中での活動が可能。またこの「コマンドソニック」を武器として使用することもある。



 ムーンベースの当初の任務は、デスマルク軍団が利用している磁力エネルギーの研究だった。デスマルクのプラズマ光線を防ぐために、ミクロマン達は3つの技術を確立していた。1つめは、ミクロマンパンチにも施されたナイトニウムの装甲である。2つめはミクロマンブリザードがもたらしたブリザードストームで、真空中では長い射程距離を持つプラズマも、冷却ガス中では急速に減衰させることができた。そして3つめの磁力バリヤーは、デスマルクのプラズマ光線を防ぐのに特に効果があると考えられた。プラズマは高エネルギーの荷電粒子であるから、強い磁場によって進路を曲げることができる。ちょうど地球の磁場が、危険な宇宙線から地上の生物を守っているように。既に、胸と両足に磁力を帯びたミクロマンパンチが実戦でその有効性を証明していた。プラズマ光線は磁力線に沿って螺旋を描きながら胸部プロテクターの吸収装置に導かれ、そのエネルギーは反撃に用いることもできた。エネルギー吸収装置の原理は、ミクロナイトのシールドと同じで、小型サイクロトロン内にプラズマを閉じ込めるというものである。
 しかし磁力エネルギーには謎が多かった。例えば地磁気の原因はまだはっきりとはわかっていない。どうして磁極軸が自転軸とずれているのか。どうして地磁気の反転が起きるのか……。
 M265ウェインは、ローリングサンダーを使って磁力エネルギーの徹底的な研究に取り組んだ。時には惑星内部の探検も行った。研究拠点として、地球からの電磁波や地磁気の影響を受けない月の裏側は最も適していた。彼の理論では、磁場の強さを究極まで上げていくと、一種の磁気的なブラックホールができる。通常の重力場によるブラックホールと違い、帯磁した物体以外は吸い込まれることはない。また、N型の磁気ブラックホールとS型の磁気ブラックホールが対になって発生するのも特徴である。磁気ブラックホールは周囲の磁荷と中和して短い寿命で消滅してしまうが、この時、磁気ブラックホールからはモノポール(磁気単極子)が発生する。このモノポールが、星間帝王に対する有効な兵器となり得るというのである。
 海王星前線基地がデスキングの攻撃で大きな打撃を受けたのを機に、ミクロマンたちはウェインの指揮の下、ハイパーブリザード計画を実行に移した。まず月の北極と南極に磁気ブラックホール発生装置を建設した。ここから発生する磁力線によって、プラズマ兵器の精度を落とし、超長距離の攻撃をエネルギー吸収装置に導くほか、月を一個の巨大なブリザード発生装置として敵の彗星基地に対抗していく。このようにして戦闘を有利に進めるというのが、計画の表向きのねらいである。
 その裏でGLFTは、M155ウィンドイーブルの異次元空間発生現象の解析データを利用して、ムーンベースの磁気ブラックホール発生装置を発展させ、異次元発生装置を開発しようとしていた。

 異次元空間との境界を安定させる異次元制御モジュール「ミクロム1999」の完成により作戦はほぼ成功と思われていたが、その作動実験中にシステムが暴走。研究施設とともに異次元へと引き込まれてしまう。
 この事件によって、異次元空間制御技術の危険性を認識したミクロマンたちは、ただちに計画中止を決断している。

M166 サラム
機械工学の権威で「オペレーション・ムーンゲイト」の中心的存在。エンジニアとして「トライヴァイパー」など数多くの武器開発に携わっている。異次元制御モジュール「ミクロム1999」の作動実験中の事故により、異次元空間に引き込まれ行方不明となっている。



※ 中間部は創作です。その他の部分は浪曼堂ゼロゼロペーパーから引用しました。


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1980年12月8日 1986年12月8日
or
1999年


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