ミクロアース物語 2.00

サラムとサラム

 ついにミクロマンはミクロム2000のモジュールを全て回収することに成功した。完成したミクロム2000を使って異次元への出入り口を解析し、異次元発生装置を奪い返すとともに、アクロデビル元帥を討ち取った。

 サラムにはやらなければならないことがあった。それは、M166サラムを救助することだった。
 アロムの父が異次元発生装置を作ったのもそれがねらいだった。宇宙科学局の技師だったサラムが受け取ったテレパシーについて報告を受け、興味を覚えた彼は異次元空間のM166サラムと連絡をとりながら、スーパーコンピューター『ミクロム2000』を稼働し、『異次元発生装置』の完成を目指したのだった。
 事故により研究施設もろとも異次元空間へと消えたM166サラムは、αHから地球を守るために何としても太陽系へ帰らなければならなかった。しかし、不安定なミクロム1999の能力では、異次元空間を制御するのは難しく、さらなる危険も予測された。そこで彼は助けを求めて異次元からテレパシーを発信した。たった一人それに答えたのが、ミクロアースのサラムだった。名前や能力が同じだけでなく、使命に燃え、平和を愛し、正義を信じる心も含めあらゆる点で似ていた彼だけが、時空を超えて同調できたのだった。コンタクトに成功すると、今度は異次元発生装置の原理と異次元制御モジュールの改良点を伝えた。
 ミクロアースの宇宙科学局では、スーパーコンピューター『ミクロム2000』を駆使して『異次元発生装置』の完成を急いでいたが、ある日、異次元のサラムから警告があった。異次元空間で彼は、アクロイヤーと名のる種族の攻撃を受けているという。しかし今異次元へ救助に向かえばミクロアースを危険に巻き込んでしまうというのだ。その後異次元からのテレパシーは完全に途絶えた。ミクロアースのサラムは気が気でなかったが、それからしばらくして宇宙の彼方から宇宙征服をねらうアクロ星人(アクロイヤー)が現れ、ミクロアースを襲った。この戦いでミクロアース側は完成したばかりの異次元発生装置を用い、敵の本拠地であるアクアムーンを亜空間に追放することに成功した。しかし、再び現れたアクロイヤーによって異次元発生装置を奪われ、ミクロアースを爆破されてしまったのだった。

 異次元発生装置の奪還に成功し、アクロ軍団を壊滅させた今、最大の関心は異次元のサラムの安否と、彼が守ろうとした故郷の星の運命だった。M-011サラムはテレパシーで呼びかけたが、これまでに何度も試したのと同じように、応答はなかった。
 それを見ていたたかし少年が、「僕がやってみるよ」と言って、手のひらにサラムを載せた。心を静め、サラムと意識を通わせるようにした。すると――宇宙を漂うカプセルの光景が見えた。中ではもう一人のサラムが眠っている――これで充分だった。ミクロム2000はその光景から該当する異次元宙域を割り出し、大気圏外に異次元へのゲートを開いた。直ちにミクロマンとたかしは、マザーコスモスで異次元へと飛びたった。
 ミクロマン達はたかしが指す方へと異次元空間を進んでカプセルに近づき、これを収容した。やがてエネルギーを供給されたカプセルで、もう一人のサラムが目覚めた。サラムは亜空間でアクロイヤーの攻撃を受け、ミクロム1999を奪われたのだった。そのアクロイヤーがミクロアースにまで襲いかかったと聞いた彼はひどく心を傷め、生き残ったミクロアースの人々を探し出すのに力を貸したいと申し出た。また、アクロ星人の残党による攻撃に警戒せねばならない点も指摘した。その一方で、彼の故郷を守るためαHを消滅させるのに手を貸してほしいと願い出た。彼の故郷とは、たかし達の地球と同一にして、違う運命を持った世界である。争いが絶えず、美しさを失いつつある星ではあるが、希望を抱いて懸命に生きる人間もたくさんいて、決して見捨てることはできなかった。

 その時、知的でニヒルなイリアが言った。「異次元発生装置とミクロム2000を使えばαHを異次元に吸い出してしまうことはできる。しかしαHのことは放っておいた方がいいかもしれない。人間が全てミクロ化してしまえば、ミクロマンと地球人はそれこそ対等に付き合えるようになるだろう。人間達が自滅しようとするかのような振る舞いをこのまま続けるなら、我々の考える平和な社会で一緒に暮らすのは永久に無理なのではないか。」

 「そう言えば、」とクレオが口を挟んだ。「私達のミクロアースは遥か昔、巨人族によって作られたという伝説があります。その後私達の先祖がミクロアースを受け継いでから、急速に文明が発達したそうです。この伝説を再現するかのような話ですね。小型の人類へと世代が移り変わるのは自然なことかもしれませんよ。」


αH7に包まれようとしている人類を助けますか?



※ このページの内容は、全て創作です。


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